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プランクトンを知ることは海への想いを育む ~ディスカバーブルー水井涼太さんが教える海の学び③~
2023-10-21 20:31:18

海洋酸性化やプラスチック汚染など、近年、海が抱える問題は大きい。大気中に含まれる二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスによる地球温暖化の影響も受け、少しずつ、そして確実に海に異変が起きている。プランクトンを知ることが生態系への理解につながることは既にご紹介した通りだが、プランクトンの役割は生態系を支えることだけではない。プランクトンと地球環境はどのような関係にあるのか、地球のためにプランクトンとどう向き合うべきか、今回も水井涼太さん(特定非営利法人ディスカバーブルー)にお聞きしました。


ヤコウチュウによる赤潮の様子。


植物プランクトンは光合成を行い、二酸化炭素を吸収する。吸収した二酸化炭素と水から有機物を作り出すのだ。植物プランクトンが光合成で作り出した有機物は動物プランクトンを通して魚などに食べられる。このように食物連鎖のベース(底辺)となり生態系を支える役割を担っている。また地球の環境面において、植物プランクトンは光合成の際に二酸化炭素を取り込むため、地球温暖化の進行を食い止める役割も期待されている。


水井さんは、プランクトンが地球環境に果たす役割についてもっと注目してほしいと語る。同時に、地球温暖化が海にもたらしている変化にも、多くの人に関心を持ってもらいたいという。


「相模湾では春になるとプランクトンが大量発生し海水が濁るため、その様子は春にごりと呼ばれています。春にごりは生命あふれる海の姿です。このプランクトンを食べるために魚たちが集まってきます。しかしここ数年、春にごりの量や期間が少なくなってきたと地元の漁師さんが話していました。直接の原因はわかりません。しかし、地球温暖化に伴う海水温の上昇で冬場に水温がしっかりと下がらないことなど海洋環境の変化は確実に進んでいます。春にごりがなくなると、プランクトンを捕食する生き物の生態に影響を与えることになります。また、冬場でも海水温が温かいため夏場に南から来た魚が相模湾で越冬できてしまうことも問題です。現在の相模湾では以前は見かけなかったハタやクエの仲間、アオブダイが泳いでいます。造礁サンゴも過去数年で急に増えてきていますし、夏場はチョウチョウウオの仲間も見かける種数が増えてきました。年を追うごとに相模湾の魚類相が変わっていく様子に大きな危機感を覚えています」

南国の象徴のようなチョウチョウウオだが、最近は相模湾でもたくさん見られるようになった。写真は相模湾で夏~秋にかけて多く見られるチョウチョウウオの幼魚。


プランクトンは水温だけに影響を受けるわけではない。例えば植物プランクトンが増えるためには太陽の光だけではなく、窒素や炭素、リンなどの栄養も必要になるという。海にこれらの栄養が不足すると植物プランクトンがなかなか増えず、豊かな生態系とはならない。
「植物プランクトンが必要とする栄養の多くは陸上の森から川を伝って海に供給されます。ゆえに植物プランクトンは川が流れ込む沿岸部の方が沖合よりも多いのです。『森は海の恋人』という言葉がありますが、森が豊かだとその下流に広がる海も豊かになるのです」


山をきちんと管理・保全することで、川を通して豊富な栄養が海に流れ込む。山と海はつながっていることを忘れないでおきたい。出典:ディスカバーブルー「プランクトン観察」資料


森とプランクトンの関係はぜひとも知っておきたい知識だが、近年、川を伝って海に流れてくるのは森の栄養だけではない。相模湾でも大雨の後や風が強い日などには、海に流れ込むプラスチックごみが目立つようになってきたという。海に流れ込んだプラスチックごみは紫外線や波の影響を受け、細かく砕け、やがてマイクロプラスチックとなる。この海洋プラスチックやマイクロプラスチックが生態系に大きなダメージを与えている。


「プラスチックにはさまざまな添加剤が含まれていますが、それが海に溶出する場合があり、化学物質が海洋全体を汚染し始めています。さらに、プランクトンをエサとする生き物が誤ってマイクロプラスチックを食べてしまい、成長に影響を及ぼしてしまうことも懸念されています。この状態が続けば、海の生物全体の量が減ってしまう可能性もあります。従って、海のプラスチック汚染は本当に深刻な問題なのです。街に暮らしている人にとっては海の存在は遠く、自分が出したプラスチックごみが海の生き物に影響を与えているとは想像しにくいかもしれませんが、海に流れ込むプラスチックを減らすために、できることから始めて欲しいです。また、酸性化も非常に深刻な問題です。大気中の二酸化炭素が増えれば海に溶け込む二酸化炭素も増え、海の酸性化が起こります。海には貝やウニ、サンゴなど炭酸カルシウムを使って殻を作る生き物がたくさんいます。幼生期などに、酸性化で殻の生成がきちんとできないと成長に影響を及ぼす可能性があるのです」


光合成をして大気中の二酸化炭素を吸収してくれる植物プランクトンは、温暖化が進む今、地球環境にとって大切な存在だということがわかる。そもそも海は大気中の二酸化炭素を吸収してくれる存在だが、海中の二酸化炭素を植物プランクトンが吸収し濃度を下げることで、海はさらに多くの二酸化炭素を大気中から吸収できる。そうであるなら、植物プランクトンを無尽蔵に増やしていけばいいと思うかもしれないが、そう単純なものではない。


「赤潮は特定のプランクトンが大量発生し、海を赤く染める現象です。原因となる種はいくつもありますが、有毒なプランクトンの赤潮が発生すると、生態系や水産資源に影響を及ぼすことがあります。高度経済成長期にはリンなどを多く含む生活排水や工場排水によって海が富栄養化し、プランクトンが大量発生して海底に降り積もりヘドロの原因となりました。現在は下水処理による排水の管理が徹底されていますので、海が富栄養化することは少なくなりました。」


温暖化、酸性化、マイクロプラスチックなど、今、海はさまざまな問題を抱えている。そして多くの問題が解決されないまま時間だけが過ぎている。怖いのは海の変化が分かりにくいことだ。そして街で暮らす人たちは日常的に海に触れることはなく、海について考える機会も少ない。その関心の低さが海の問題を助長していく。日本は海に囲まれた島国でもあり、もっと海に関心を持って欲しいと水井さんは力を込める。


「プランクトンがいる海はまさに栄養豊富なスープです。海中に栄養が漂っているわけですから、さまざまな生き物が岩などに付着して生きています。エサを求めて移動しなくてもいいのです。またナマコなど、海底に降り積もったプランクトンの死骸や有機物を食べる生き物もいます。プランクトンは深海の生態系も支えているのです。プランクトンは魚などの遊泳する生き物だけでなく海洋全体の生態系を支え、さらにその先の人間に至る食物連鎖を支えています。海はいま、さまざまな問題を抱えていますが、適切な環境さえ整えば、生命は増え、海は自然と再生していくでしょう。だからこそ、プランクトンの大切さをもっと知って欲しいのです」

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D.Y.F.Cの歴史は、40余年。会員のお子さんにとって「その人生で最も感性豊かなときに、かけがえのない体験を」、そんな思いからダイワヤングフィッシングクラブは1976年に発足しました。この当時、コミック界では異色な釣りマンガが少年コミック誌で連載がはじまり、たちまち一大ブームが起きました。それまで大人の趣味であった釣りが、日本中の子どもたちに注目されることになりました。
温暖化の影響で年々海水温が上がり、秋冬といっても海の中は夏の色が濃い状態が続いています。それでも台風や低気圧で徐々に水温が下がり、今年も間のなく待望のシーズンがやってきます。